Between

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12k2026

REVIEW: HATENA (JP)

VISIT 木と水が、柔らかい電子の音によって深く深く共鳴するような音響の連鎖、生成、持続。本作を喩えるなら、そんな言葉が思いつく。

年も押し迫った12月中旬過ぎ、12kから2012年最後のリリース作品『Between』がリリースされた(12を三回繰り返した!)。Simon Scott、Corey Fuller、Marcus Fischer、Tomoyoshi Date、Taylor Deupreeらのセッション録音のライブ作品である。本アルバムは、2012年に慣行された12kのジャパンツアーにおいて、京都「きんせ旅館」で録音された音源を用いている。「きんせ旅館」とは、京都の島原にある築250年の木造の建物で、最初は「揚屋」として、その後、「旅館」に、そして今はカフェや文化交流のためのサロンとして運営されているという。

私は12kからのライブ録音作品には外れがないという持論を持っているのだが、今回の作品もまたその持論を裏付ける(?)かのような素晴らしいアルバムであった。特に名だたる12kの音楽家の面々によるセッション、日本(京都)という場所での録音ということもあり、他にない独特の静謐さが音の隅々から鳴っているように思えた。彼らの個性が「きんせ旅館」という長い時間が染み込んだ空間に、静かに、深く、呼応するかのようなミニマル/アンビエントな演奏である。

この演奏は、どこまでコンポジションされていたのか、どこまでインプロヴィゼーションなのかは分からない。が、即興の中で音が静かに、まるで落ち葉の音ように微かに、繊細に生成していく様に感動した。アルバム録音作品でないがゆえの、音の距離感と空間性がサウンドの質感とでもいおうか。そこから生まれている独自の物質性(硬くて、柔らかいような。ある意味、木のような?)が堪らないのだ。38分という時間の中で、まどろみと微かな覚醒が交互に訪れるようなサウンド・スケープが展開されている。

アンビエント/ドローン化した12kは、チルウエィブの流れとも繋がっていく、極めて現代的な変化だと思う。それが逃避のための音楽という意味で。逃避といってもそれは必ずしも悪い意味だけではない。そもそも世界はあまりにも厳しく残酷であり、経済原理と競争主義が人を押し殺していく場所だ。だがそんな時代・世界を生きている人も、時にまどろみのなかに逃避することもあるだろう。微かな光の、柔らかい暖かさの中で世界から浮遊すること。眠りというループホール。覚醒と睡眠の間の穏やかにしてハレーションする光のようなサイケデリックな持続、快楽。そう、今の12kの音楽は、世界からほんの少しだけ逃避する響き。アンビエント/ドローン、それは、まどろみの音楽である。それは競争と狂騒を強要する世界への、微かな、本当に微かな抵抗?

本作は地味ながらも、そんな「アンビエント/ドローン化」した静謐な作品をリリースしてきた12kの、熟成された音楽・音響記録した貴重な作品として後世に伝えられることになるのではないか。即興・ライブ録音であるがゆえ、その音の気配を間近に感じられるし、エレクトロニカ系列のアンビエント/ドローンは、コンポジションとインプロヴィゼーションの中間にある音響の持続こそ重要であることも分かってくる。

残念ながら、リミテッド盤ということだが、より多くのアンビエント・ファンに聴いて頂きたい逸品だ。ジャケットも特殊パッケージ。中には屏風型の木の模様がプリントされたブックレットが収まっており、パッケージ全体で、音楽の雰囲気や空気を見事に表現していると思う。
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